購買と幸福度の相関性

商業における法則で8月と2月は二八(ニッパチ)と呼ばれ、
消費が落ち込む時期とされています。

四季の体感を極端に分類すると、8月は酷暑、2月は極寒のため
外出を控えることも影響し、購買意欲が下がることが一因ですが、
さほど影響を受けずに消費者に購入してもらうにはどうすればよいのでしょうか。

今回は買い物をするという行為の原点に立ち返り、
消費者目線に立ち、どのような感情の推移から購入に至るのかを紐解きます。

■欲望の先にある幸せ

例えば髪の長い女優がメディア露出しており
彼女の艶のある髪はひと際美しく目をみはるものがあったとします。
そして彼女が「○○というブランドのシャンプーとオイルを使っているんです」。

そのような時、人は同調と羨望による理想の状態を結び付け
彼女と同じものを使うことでそのようになれると期待します。

私たち人間の社会的特性の一つとして所有欲があり
物を手に入れることで欲望が満たされ、幸せを手にする考えがあります。

90年代以降は薄れてきたものの、特に物に執着が強い「物質主義的な考え方」を持つ人は、
何かを手に入れようと考えるだけで購入する前から幸福感が高まります。

しかし、いざ購入して手元に届くと購入時の感動というものは少し薄れているものです。
届いてから数日は大切に使いますが、しばらくするとたんすの肥やしと化していくものです。

店舗は様々な工夫を凝らし、その商品がいかに素晴らしいのかをページ上で力説します。
数字を使って煽ったりセール会場が賑わっているように見せるなどの
デザインにおける演出がその代表例です。

もちろん最初から欲しくて買うケースもありますが
時には最初は興味のなかった商品を購入しているケースも多々あるのです。

店舗運営者の中には、結果的に購入に至れば売上は伸びるので
そこに行きつくプロセスを重要視しない場合もあるとは感じられますが、
最初は興味がなかった商品を購入する場合
単にページ上の画像やキャッチコピー、商品力だけが影響しているとも限りません。

店舗運営を長く続けていると「物を売ること」のプロ化が思考停止を招き
「物を買う」ことに対して客観視できなくなってしまうことがあります。

そんな時は特に知見がない商品の買い物経験を増やすことをおすすめします。
逸れますが、誰かへの贈り物を選ぶと良いでしょう。

特に必要に迫られているわけではないのになぜか欲しくなってしまう商品は
商品力だけではなく、商品をアピールする要素に何らかの秘密が隠れています。

■買うという体験が心を満たす

例えば、最近会った友人との食事会のことを思い出してみましょう。
そのことを思い出すと心がふわっと温まるのではないでしょうか。

私たち人間は無意識のうちに物より「体験」に高い価値を見出す傾向があるからです。
これが「買う」という行為を一連の「体験」として捉えることで価値のある行為と感じ、
自然な形で購入に至るケースの最たる例です。

この「体験」という要素をデザインで表現する場合、消費者参加型のコンテンツを作り、
どんどん巻き込みながら購入を促す方法があります。

例えばページ上のどこかに隠れたクーポンを探させる、合言葉を入力するとログインできるなどの
どこかワクワクできるものが望ましいでしょう。

上記は買い物を「体験」として捉える方には適した方法ですが
物質的な豊かさを重要視する方は、「体験」と同様の価値を物に見出すこともあります。

物という観点からすると、自分と友人の所持品を比較してしまったり
所持品の価格や見た目によって自分が周りからどう見られるかを気にしたりもします。

そんな心境での買い物はポジティブな感情が結びついて成立するものではないはずです。
どちらかというと「これを買うことで○○さんより優位に立てるのでは」というような
一種ネガティブな感情に左右されていることが伺えます。

特に高級家具や時計などステイタスを感じるような商品の場合は
優越感を刺激するような演出で消費者を煽っていくことをおすすめします。

上記のケースとは違い、時には必要に迫られて買い物をすることもあるでしょう。
ただし「必要に迫られて買う」のと「欲しくて買う」のには明確な違いがあります。
必要に迫られて買う時、消費者は「買えば幸せになれる」という期待を滅多にしないのです。

これらの要因から、自分の明確な意思のもと物を買う消費者と
流動的な感情のもと物を買う消費者とではたとえ同じ商品を買うという行動は同じでも
全くモチベーションが違う
ということを客観的に意識しておく必要があるので、気を付けましょう。

体験・イベント性が強い商品とステータス優先商品と必須・必要消費商品の3種類について分けました。
これらは消費者の嗜好性・性格と状況と商品の特質によって違います。
つまりこれらの商品のどれを扱っているのかでデザインとしての見せ方が変わりますので、
しっかり合致するように意識してみましょう。

消費者目線を忘れない店舗運営を心がけよう!