ECの安全性と法改正

2022年6月1日より「改正特定商取引法」が施行されました。
改正特定商取引法とは、消費者被害の防止及びその回復の促進を図るための特定商取引に関する法律等の一部を改正する法律(消費者庁HPより抜粋)で、施行により、ECサイトで消費者が注文を確定する直前の段階で商品の分量や支払い時期、返品や解約等の案内を確認できることが義務化されました。

今回は改正特定商取引法が施行された経緯と共に、見落としがちな法に基づいた対応箇所をお伝えします。

ECの普及と共に増加した悪質な手口

特定商取引法(正式名称は特定商取引に関する法律)は、昭和51年に施行されました。
特定商取引法は、消費者トラブルが生じやすい訪問販売・通信販売・マルチ商法等、特定の取引形態を対象とし、取引の適正化を図る法律で、一度契約した商品を一定期間内であれば契約解除できるクーリング・オフ制度もこちらに含まれています。

通信販売は特定の取引形態としてこれまでも対象とされてきましたが、2000年以前は今のようにECが盛んではなく、利用者も限られていました。

2000年以降、スマートフォンの普及によりECが急加速したことで利用者は増加し、幅広い年齢層の方から支持されるようになりましたが、その一方でトラブルも増加しました。

中でも「定期購入」は多くのトラブルの火種となりました。
例えば、安価なお試し商品を購入したら翌月大容量で高額な商品が届き、慌てて問い合わせたところ、定期購入扱いの商品を購入していたケースです。

販売事業者は「定期購入だとサイトに書いてあるので違法ではない」の一点張りですが、非常に小さい文字で書かれていたため、消費者はうっかり見落とし購入してしまいます。

このような悪質事業者が横行したことでトラブルが頻発し、定期購入自体を悪と捉える消費者が増加した背景がありますが、消費者のことを第一に考え真摯に取り組んでいる定期購入を扱う販売事業者にとっては死活問題です。

定期購入は単発で購入するよりもお得な価格設定と便利さで人気を博しており、昨今はサブスクリプションの影響で、定期購入契約へのハードルは低くなりました。

今回の法改正により、サブスクリプションも含む定期購入商品は誰が見ても定期購入商品と分かる記載が必須となり、消費者は意図しない購入や契約を避けることが可能となったのです。

今一度確認したい個人情報の取扱い

改正特定商取引法と共に重要なのが「個人情報保護法」です。
個人情報保護法も時代と共に変化しており、2022年4月1日から改正個人情報保護法が施行されています。

旧法では個人情報の漏洩等が発生した場合の報告義務はありませんでしたが、新法は個人情報保護委員会と本人に通知することが義務化されました。

わたしたちEC事業者は、これまで以上にお客様の個人情報を慎重に扱う必要がありますが、保持している個人情報の漏洩を恐れるあまり、個人情報を取得する際の注意が疎かになっている場合があります。

例えば、ECにおいて会員制度を設けている店舗は少なくないですが、ほとんどの店舗では非会員でも購入が可能です。

新たに会員となる場合、会員登録画面に遷移する形で登録を行いますが、改正個人情報保護法の観点から、会員登録画面には「利用規約」と「個人情報の取り扱い」ページへの導線を設置し、会員登録する前に消費者の同意を取る必要があります。

非会員の方が商品を購入する際に個人情報を入力する場合も同様に、「個人情報の取り扱い」ページへの導線を設置し、情報を入力する前に消費者の同意を取る必要があります。

個人情報は住所や氏名だけではなく電子メールでも該当することがあります。
電子メール自体が必ずしも個人情報に該当するとは言えませんが、@マークの前が氏名で@マークの後が会社名等、個人が特定できるアドレスの場合、個人情報となる可能性があります。

サイト上でメールマガジン登録を促すポップアップを表示しているケースをよく見かけますが、改正個人情報保護法の観点から、ポップアップ上に「個人情報の取り扱い」ページへの導線を設置し、お客様がメールアドレスを入力する前に同意を取るのが賢明です。

ECに関わる法律は時代と共に変化しています。
ソフト面とハード面をしっかり整え、消費者が安心して利用できるECを目指しましょう。

法に基づく表記でECの安全性を高めよう!