消費者に媚びない売り場作りとは

来年のオリンピックを控え様々な商業施設がオープンする中
2016年より休業していた渋谷パルコが11月22日にリニューアルオープンしました。

アパレル不振が叫ばれる昨今、全193店のうちアパレル主体の店舗が94店と今時の商業施設らしからぬ数の多さに驚かされますが、中でも特に注目したいのが、店頭(オフライン)とオンライン(EC)が融合したオムニチャネルショップです。

今回は、消費者の購入傾向を意識した売り場作りとはどのようなものなのかを紐解きます。

ウイークポイントを逆手に取った販売手法

渋谷パルコが展開するオムニチャネルショップは11店舗あり、各店舗の売り場面積は従来の半分程度、店頭の実在庫は注力商品のみに絞り、その他の商品はECで販売するという大胆な手法です。

各店舗の自社ECとパルコECをデータ連携させて消費者は気になった商品の在庫を店頭に設置されたタブレット端末から検索し、店頭または、自身のスマートフォンでも購入できる仕組みとなっています。

店頭の醍醐味と言えば、直接商品を手に取ったり試着して着心地を確かめたりできることですが、その反面、店員の接客に苦手意識があったり、試着自体を面倒に感じる消費者も少なくありません。

かつて渋谷の商業施設には「カリスマ店員」と呼ばれるファッションの神が存在し、ブランド指向が強い平成の時代をリードしてきましたが、インターネットやSNSの拡がりとともに衰退し影響力のある人物が数多く現れたこともあり、ファッションやカルチャーは『自由化』しました。

店頭よりECで商品を購入する消費者が増加し、商品購入時はスマートフォンを使用するケースが8割を超えると言われる昨今。

消費者の多くは、新しい情報を仕入れるために店頭に出向くのではなく、SNS等で事前に調べた情報の『答え合わせ』をするために店頭に出向き、多くの選択肢の中から自身のスタイルや金銭感覚にマッチしたものを比較検討した後に、最愛の商品を選ぶのです。

比較検討の先にある満足度

消費者の購入傾向を意識した販売手法を取り入れた渋谷パルコのオムニチャネルショップは、店頭接客のウィークポイントを逆手に取った現代的な売り場とも言えますが、販売者側の正直な気持ちとしては、自店の商品を他店と比較検討されることなく「即決購入して欲しい」と感じるでしょう。

しかし消費者は、「欲しい商品をお得に購入したい」という理由から、購入前にほぼ100%の確率で、何らかの形で比較検討するでしょう。

これは店頭もECも共通ですが、特に女性は「目的」より「インスピレーション」を大切に買い物をする傾向が強く、男性よりも『ウインドウショッピング』を好みます。

もちろん長時間費やしたにも関わらず、ピンとくるものがなかったという理由で「何も購入しない」ということも多々ありますが、ここで重要なのが「購入タイミング」です。

先述したオムニチャネルショップの場合、気になった商品を店頭でもスマートフォンでも購入できる仕組みとしており、購入を検討したい消費者は、当然店頭では購入せず自身のスマートフォン内に商品のログをブックマークとして残すことになりますが、商品の購入タイミングは消費者の属性やライフスタイルにより異なります。

特にスマートフォンユーザーは通勤通学時や昼休み等に比較検討を行い、帰宅後に購入する傾向が高いため、カスタマージャーニーを考慮し、即決購入だけではなく、今一度ブックマークの必要性を意識してみましょう。

消費者がブックマークする商品は『今後購入する可能性を秘めた商品』です。

比較検討と購入は1セットとして捉え、購入タイミングを消費者に委ねることで、消費者は多くの選択肢の中からじっくり比較検討し、最愛の商品を選び、自身の良きタイミングで購入します。
急かされることのない自由な購入体験こそが消費者満足度を高める秘訣と言えるでしょう。

消費者の購入傾向を意識し、満足度向上を目指そう!