お得意様の心を掴む特別な接客とは?

コロナ禍以降初の行動制限のない年末年始、国内でも帰省や旅行を楽しむ消費者が多く見られました。
水際対策が大幅に緩和されたことや円安の影響もあり訪日外国人も増加しましたが、中国人の訪日は水際対策の再強化により伸び悩んだと言えます。

国内の景気が上向くのはまだ少し先になりそうですが、今回はインバウンド消費の最前線である百貨店にスポットを当て、接客の妙技を紐解きます。

変わりゆく百貨店の立ち位置

日本百貨店協会がまとめた数値によると、2022年の全国百貨店の売上はコロナ禍前の9割まで回復しており、日常を取り戻しつつあります。

今日における百貨店の客層は女性比率が高く、女性をターゲットとした店舗が多い印象ですが、一昔前はファミリー層が楽しめる娯楽施設に近い立ち位置でした。
屋上には遊園地やレストランがあり、1日中居ても飽きないような場所でしたが、郊外に誕生した大型ショッピングモールの影響もあり、ファミリー層のニーズは徐々に分散しました。

近年の百貨店の立ち位置は、少子化や女性の社会進出も起因し、娯楽施設から女性が買い物を楽しめる場所へと変化しています。
ターゲット層に合わせて出店店舗や品揃えを変える必要がありますが、ファッションビルと一線を画す百貨店独自の取り組みの一つに「外商」があります。

外商とは日本古来の商いの手法で、高額商品を購入するお得意様への商品提案に特化したコンシェルジュサービスです。
多くの百貨店には外商専門の部門が存在しており、外商経由の売上が百貨店の肝と言っても過言ではないでしょう。

コロナ禍以降、百貨店で取り扱うハイブランド商品の値上げが相次いでいますが、世界的な需要の高まりから供給が追い付かず、プレミア価格となっている商品も多々あります。

並行輸入サイトや中古品を扱うサイトでは定価の倍以上の金額で取引されており、新品を定価で手に入れるには店頭で購入したいところです。
しかしながら、宝飾品やファッション関連商品はあえて店頭に商品を並べず、外商経由でお得意様だけに紹介されるケースが多いのも実情です。

人気商品を店頭で購入するための秘策がSNS上で公開される昨今ですが、希少価値の高まりに左右されることなく、買わずに借りるという選択も1つの解決策でしょう。

満足度の高い接客の鍵は「先読み提案」

百貨店の外商はお得意様のあらゆる情報を収集し、ニーズを可視化しながら最適な商品提案を行います。
提案する商品の多くはお得意様のニーズにマッチしており、その利便性からお得意様が別のお客様を紹介することも珍しくありません。

百貨店からお得意様として認められる外商会員になるためには、商品の購入歴以外にも一定の基準や審査があるとされていますが、商品の購入によりお店のお得意様になるのはECも同様です。

ECの場合、消費者の購入意欲を図る物差しは商品の購入以外にもたくさんあります。
例えば商品を購入する際、会員登録を行ってから購入するケースと非会員の状態で購入するケースがありますが、会員登録を行ってから購入した消費者は再来店する可能性が高いでしょう。

初来店時に購入した商品と会員情報をベースとし、どのくらいのペースで再来店しているのか、配信したメルマガに掲載されているどの商品をクリックしたのか等、店舗に対する興味と商品に対する興味の度合いを細分化し、ニーズを可視化しましょう。

自店の商品を何度も購入してくれているリピーター会員の場合、百貨店の外商と同様に通常会員との差別化が心をくすぐります。

特別セールのご案内や商品の先行販売はもちろん、今欲しい商品だけではなく、これから欲しくなりそうな商品を顧客情報から予測して先読み提案を行うことが、お得意様の心を掴んで離さない特別な接客と心得ましょう。

ニーズを可視化した先読み提案でお得意様の心を掴もう!