コミュニケーションするピクトグラム

7月23日から開催されている東京オリンピック。
例年にはない静寂の中で行われた開会式でしたが、国内外から大きな注目を集めたのが「ピクトグラム」を利用したパフォーマンスです。
今回はピクトグラムのルーツと共にECでの役割について考えます。

ピクトグラムのルーツ

ピクトグラムは、言語を使用せず直感的に情報を伝えることができる視覚記号です。

街中や多くの人が利用する公共施設で目にする機会が多いピクトグラムですが、言語への理解が乏しい外国人や子供、文字が読み辛い高齢者や障害のある方にも瞬時に意味が伝わるよう、単純化した図柄と単色を用いるのが特徴です。

ピクトグラムのルーツは1920年頃のオーストリアで、経済や社会情勢を市民に分かりやすく伝えるために考案された「アイソタイプ」が基になったと言われていますが、世界的に浸透するきっかけとなったのが1964年に開催された東京オリンピックです。

言語の壁を払拭し、誰が見ても分かるシンボルを用いた視覚的なサインとして採用されたのがピクトグラムです。

オリンピック競技等を含めた約39種類が考案されましたが、デザイナーが意図的に著作権を持たなかったため、やがて世界的に採用されるようになりました。

伝えたい情報を瞬時にイメージできるのがピクトグラムの魅力と言えますが、受け取る側の認識や理解度は未知数であり、場合によっては全く違うものをイメージしてしまう懸念もあります。

その一例に2020年の東京オリンピックを見据えて経済産業省がデザイン変更を検討していた「温泉マーク」が挙げられます。

日本人にとっては非常に馴染み深い湯気のマークも、外国人には食べ物のように見えたりと理解に差が生じてしまったため、現行の湯気のマークと、湯気に人物を加えた国際規格を併用する形で着地しました。

世界で共通認識されやすい「トイレ」や「リサイクル」を表すピクトグラムはイラストのみを使用しても差し支えないと言えますが、「落石」や「津波」等、注意喚起を促すような場合は確実に意味を伝える必要があります。

このような場合、イラストと文字を組み合わせたり危険を認識しやすい色を用いることで、多くの方が瞬時に理解できるよう配慮します。

ECの中にあるピクトグラム

ピクトグラム化することは、「伝えたい情報を集約する」という点においてECサイトのバナー制作に近いものがあります。
例えばセールバナーを制作する際、MAX○%OFFやポイント○倍と言った文言をオブジェクトの上に配置した経験はないでしょうか。

バナーの大きさにもよりますが、1枚のバナーの中に掲載できる情報量は限られており、視認性を保ちながら消費者に意図を伝えるには、情報をある程度精査する必要があります。

そのため、消費者に刺さるインセンティブワードをオブジェクトの上に配置し、ピクトグラムのように見せることで、注意を惹き目立たせることが可能です。
このような動作を「テキスト情報をアイコン化する」と言ったりもしますが、アイコンはピクトグラムと比べると色数が多く、立体的かつ装飾的なフォルムが特徴です。

PCのデスクトップ画面やSPのホーム画面にあるプログラムやファイルの名称とセットで並んだシンボルがアイコンです。
近年フラットデザインが主流となり、アイコンの色数が減り簡略化されてきたことからピクトグラムとの境界線は曖昧になりつつあります。

伝えたい情報がより多くの方に理解されるには、色や配置場所も含めた様々な要素が関わってきますが、シンボルだけでは世界標準として機能しないことも多々あります。

先述した注意喚起を促すような場合や、温泉マークのように伝えたい情報や意味合いに応じて補足的な要素を加えることで受け手が鮮明にイメージできる『自己満足ではないピクトグラム』になります。
そうすることで、情報伝達だけではなくコミュニケーションツールとしての役割も果たすのです。

ECとピクトグラムの相性◎積極的に取り入れよう!