新型コロナウイルスによる緊急事態宣言が解かれ、オフィス街や商店街にも人や活気が戻ってきましたが、以前と同様の暮らしが戻るのは、もう少し先になりそうです。
「アフターコロナ」や「ウィズコロナ」を合言葉に、コロナと共存した生活様式を取り入れながら、日々の生活をどのように豊かにしていくのかが今後の課題となりそうです。
今回は、新しい生活様式を踏まえたECの役割を考えてみます。
「買い物」は「買うもの」へ
新しい生活様式では各場面ごとの実践例が提示されていますが、日常生活や働き方において共通して言えることは「身体的距離の確保」でしょう。
3密回避、外出時のマスク着用、帰宅後の手洗いうがい等、感染を防ぐ行動を強いられることにより、外出自体が億劫になる方も多いですが、わたしたちEC事業者が注目したいのは「買い物」の在り方です。
新しい生活様式における実店舗での買い物は、ウインドウショッピングのような「買い物」から計画を立てて短時間で済ませる「買うもの」へと変化しています。
通販の利用も政府に推奨され、食品や日用品、服飾雑貨を扱う店舗もEC化が加速し、特にアパレルはEC利用率が更に上がったことにより、実店舗の役割やECとの比重が変化しつつあります。
緊急事態宣言が解かれたとは言え外出自粛が叫ばれる中、消費者は生活する上で「欠かせないもの」と「そうではないもの」を分類しながら実店舗とECを使い分けるようになりました。
また支払い方法も見直され、現金やクレジットカードでの決済からpaypayやLINE Pay等を筆頭とした「スマホ決済」の導入が急激に増加しています。
もちろん2020年以前からキャッシュレス化や時差Bizを掲げた通勤ラッシュ回避策、マイナンバー制度等は提唱されてきましたが、ここに来てやむにやまれぬ事情から思わぬ形で消費者に浸透したと言えます。
世界観と満足度は比例しない
実店舗のお客様をECに定着させるには実店舗とECの世界観がイコールであることが鉄則と言えますが、このような状況下においてはそのセオリーが崩れる場合もあります。
例えば実店舗を持ったアパレルECで、外国人モデルが様々なポージングで写った画像に素材等の商品説明と価格情報が記載されているとしましょう。
通常時の消費者は、モデルの画像から着用している服や小物の情報を抽出し、実店舗で直接手に取り、自身の体や顔に合わせたり、試着することで購入を検討します。
しかし、実店舗で合わせることが困難な場合、外国人モデルのポージング画像と商品情報や価格だけではECで購入を検討するための情報が不足していると言えます。
ここで重要なのは「イメージできること」です。
クリエイティブな観点で外国人モデルを起用し、様々なポージングで商品を訴求しても、購入者の体形やサイズ感を考慮した情報がないと消費者は自身が着用している姿をイメージできず、ECで購入するのを断念するでしょう。
特に身長によって見栄えが変わるボトム、甲の高さや足幅によって履き心地が変わる靴、大きさによって用途が変わるバッグ等はECでの購入ハードルが上がるため、外国人モデルの画像に加え、日本人の体形を考慮した説明画像と訴求ポイントを加えましょう。
日本人モデルは画像ではなくアイコンやイラストで表現して世界観を担保しつつ、身長体重や普段着用しているサイズ、実際に商品を着用した場合のサイズ感等を画像付きで見せることで、消費者は自身の体形と照らし合わせてイメージすることができ、購入ハードルが下がります。
実店舗ではなくECで購入するということは、新しい生活様式における「身体的距離の確保」であり、今後のECの立ち位置は実店舗と逆転すると言っても過言ではありません。
ただし、「どうしても試着がしたい」や「店員さんと話がしたい」等、店舗ならではの接客を消費者が求めている場合もあることを肝に銘じ、実店舗とECの接客をほぼイコールにできるよう改善し続けることが新しい生活様式における「消費者満足度の高い接客」と言えるでしょう。
身体的距離を空けて心の距離を縮める接客を心掛けよう!