新しい文化と消費者マインド

激動の2020年を経て、いよいよ2021年が始まりました。
新型コロナウイルス終息の目途が立たない不安な状況の中、消費者は年末年始をどのように過ごしたのでしょうか。

今回はコロナ禍で生まれた新しい文化から見る消費者マインドを紐解きます。

「人」×「タイミング」で心は動く

例年の年末年始の場合、百貨店や商業施設はバーゲンや初売り等で連日ごった返しますが、2020年は混雑回避を念頭に、時短営業やイベントの開催時期をずらす等、各所で様々な工夫がなされました。

おせち料理も個食の予約が殺到する等、これまでとはひと味違う年末年始となりましたが、2020年末に非常に注目されたのが「帰省暮(きせいぼ)」です。

「帰省暮」とは、帰省とお歳暮が合わさった造語であり、帰省できず会えない家族や大切な方に贈るギフトの総称です。

贈る相手は親族や友人等、プライベートなシーンで関わる人物となるため、お歳暮よりも敷居が低くカジュアルな印象です。
贈り物のジャンルも幅広く、食品やタオル等の定番商品だけではなく、野菜栽培キット、盆栽、おもちゃ等、型にはまらない『自由なギフト』と言えます。

「お歳暮」や「お中元」等の言わば『形式ばったギフト』は近年衰退傾向であり、いつやめようかと思案している消費者も少なくないでしょう。

しかし、コロナ禍による外出自粛と巣ごもりが後押しし、おうち時間を豊かにするギフトが好まれる「帰省暮」という新しい形で復活しました。
同じく衰退傾向にある「年賀状」も、せっかく時間があるのなら印刷ではなく手書きで送りたいという需要が増え、復活の兆しを見せています。

人の心が動くその根底には「人」の存在があり、その後押しをするのが「タイミング」です。

2020年は帰省や会食等が思うようにできず、LINEやZoom等のオンラインツールを活用した年と言えますが、家族や大切な方と接点を持つ機会が少なかったことも影響し、人と人との繋がりを再認識した年でもありました。

コロナ禍という特殊な状況でもオンラインを駆使すれば姿が見えて会話もできますが、形あるものを贈ることで、贈られた方は商品に直接触れることができます。
その結果、贈り主を近くに感じることができるのです。

もちろん帰省できない場合だけではなく、あえて帰省しない等、贈る側の状況は様々ですが、「帰省暮」は今後も年末のカジュアルギフトとして、消費者に取り入れられることでしょう。

ペースと消費の相関性

年始のイベントとして欠かせない「初詣」ですが、2020年末は「幸先詣(さいさきもうで)」が推奨されていました。

「幸先詣」とは、混雑回避を念頭とし、年内に前倒しで縁起物の授与や参拝を行うことを指します。
そもそもの語源である「初詣」は、新年に社寺を参拝する行事で、旧年の感謝と新年への願掛けを行い、元旦またはお正月の3が日や松の内(1月7日または15日まで)に済ませる方が多いでしょう。

年中行事として毎年当たり前のように行っていますが、国内で「初詣」が浸透した理由は、鉄道網の発達と広告です。

本来は自宅近隣の氏神様を祭った社寺、またはその年の恵方にある社寺に参拝するのが習わしでしたが、鉄道網の発達により遠方への移動が可能となったこと、有名な社寺が恵方として宣伝を行ったことで参拝先を選ぶ時代となり、自由化しました。

古来より縁起を意識してきた国民性ではありますが、時代と共に様式が変化してきたことを知ると「初詣は元旦でなくても良いのでは?」という感覚にもなります。
しかし、「幸先詣」や分散参拝を推奨される中、注目したいのがコロナ禍となる前から時期をずらして参拝していた方の存在です。

これはECにも同じことが言えます。

例えば、大きなSALEイベントがあったとします。
イベント開始時刻に買い物をスタートする消費者もいれば、ある程度時間が経過してから買い物をする消費者もいます。
前者の場合、在庫の少ないお得な商品が買えたり、枚数制限のあるクーポンが取得できる可能性もあるでしょう。

では、後者はなぜある程度時間が経過してから買い物をするのでしょうか?
その理由の一つに「自身のペース」を守ることが挙げられます。

落ち着いた状況で商品を吟味し、じっくり時間をかけて購入したい消費者の場合、SALEイベント特有の『早く買わないと損をする』という概念はありません。
そのため、タイマーや過剰なSALE演出に急かされている印象を持つこともあるでしょう。

ここで重要なのは「消費者ごとのペースを意識したアプローチ」です。

例えば、クーポンは先着枚数で終了するのではなく、1日何枚というように分けて配布する、お得な商品も何日かに分けて在庫を投入する等、来店客を分散させることで、来店タイミングに関わらず、それぞれのペースに合わせた買い物提案が可能となります。

特に買い回りによるポイント変動イベントの場合、大きく変倍したポイントを多くの商品に利用したいと考えるため、イベント終了日は前者・後者共に来店する可能性が高いです。

この状況を意識した【買い忘れ防止クーポン】をイベント最終日に配布することで、大きく変倍したポイントを無駄にすることなく、+@の買い物をしていただける可能性が高いためぜひ実践してみましょう。

2021年は、これまで以上にECの需要が増し、同時にECを使い慣れていない消費者が来店する機会も増えるでしょう。
消費者の購入体験の良し悪しはわたしたちEC事業者の手にかかっています。
そのことを肝に銘じ、日々の運営を行いましょう。

時代に合わせたアプローチと店舗運営でECを活性化しよう!