時世を反映するEC

新型コロナウイルスの猛威は世界規模での混乱を生み、東京オリンピックは延期を余儀なくされました。
首都圏でも外出自粛要請が発令され、緊迫した日々が続いています。

テレワークの推奨や学校休校の影響で自宅で過ごす時間が増えることで動画や音楽のストリーミングサービスやECの利用が急増しますが、今回は時世とECの相関性について考えます。

危機意識の高まりと消費行動

デマが発端となった紙製品の買いだめ行為により薬局やスーパーからトイレットペーパーやティッシュペーパーが忽然と姿を消したのは記憶に新しいですが、その後、『首都封鎖』『ロックダウン』等、未知の言葉が飛び交い、人々の不安はさらに煽られ、食品の買いだめも横行しました。

品薄という『不安体験』がトラウマとなり、極端な行動に出てしまったと考えますが、このような不測の事態で「落ち着いた行動を」と言われても、簡単なことではありません。

店頭で入手できない場合、消費者はECを利用するケースが多く、大手モール内のランキングも「マスク」「体温計」「ハンドジェル」等、新型コロナウイルスの予防関連商品が上位を占めています。

ECのランキングには時世が反映されると言えますが、ここで今一度考えたいのが、2011年3月に起こった東日本大震災です。

新型コロナウイルスと同様にこれまでに経験したことのない未曾有の大災害は、人々の中に恐怖と共に危機意識を植え付け、当時の大手モール内のランキングも「懐中電灯」「乾電池」「小型ラジオ」「避難袋」等、ライフライン停止時に役立つ商品が長期間上位を占めていました。

しかし、震災をきっかけに見直されたのは危機意識だけではありません。

危機が強くした『絆』

震災により大切な家族や友人を亡くされた方、故郷を失った方を目の当たりにしたことで、家族や身の回りの方との絆を強く意識するようになりました。

その結果、消費者の意識は、形ある「ハード」だけではなく、思い出や記憶等、形のない「ソフト面」に注目するようになったのです。

震災後、ジャンルを問わず消費が冷え込んだことをわたしたちEC事業者は『不安体験』として心に刻んでいますが、欲しいものが手に入らない、指定の日に届かない等、ECで通常の買い物が出来なかったことを消費者も経験しています。

現在の極端な行動の理由は、こういった過去にも起因していると言えますが、同時に、家族や大切な方との絆を意識するきっかけになっているとも言えます。

例えば単身世帯の場合、離れて暮らすご家族を案じ、連絡頻度が増す可能性が高く、ご家族と一緒に暮らしている場合でも、食事や行動範囲等に目を配り普段以上にコミュニケーションを強化するでしょう。

新型コロナウイルスは未終息事項であり、決して楽観視できる状況ではないですが、今まで幾度となく困難に立ち向かってきた経験を念頭に消費者のニーズに応えることが、今ECに求められる最善のおもてなしでしょう。

特にこのような状況下の場合、普段ECを利用しない高齢者の利用が増加する可能性が高く、視認性への配慮や情報量の充実化を今一度見直す必要があります。

例えば、急を要する衛生商品や日用品、外出自粛により需要が増える備蓄可能な食品、ゲームソフトや書籍等は配送日程を事細かに記載した特設ページを準備し、カート付近でも大きめの文字で案内を添えましょう。

急を要さないファッション雑貨やレジャー商品等についても、明るい未来を想像できる提案に季節感を加え、消費者心理をくすぐりましょう。

もし遅延する場合も必ず電話またはメール連絡を入れる等、消費者に安心を訴求できるよう、配慮を徹底しましょう。

先の見えない不安との闘いに心身の疲労は募る一方ですが、これまでのEC事業者としての経験を活かし、消費者だけではなく、消費者の元まで運んでくださる配送業者とも連携し、可能な限り消費者の細かなニーズに応えましょう。

不安体験を絆に変えて全力で立ち向かおう!