変化するイベントの過ごし方

日本には四季があり、年間を通して様々な行事やイベントが開催されています。
今回は、季節イベント時のECのあり方について考えます。

■重要視するのは雰囲気

例えば、今や大型イベントの代名詞とされる「ハロウィン」ですが
2000年代初頭には、ここまでの市場規模ではありませんでした。

しかも現在のように大人が楽しめるイベントではなく、子供やファミリーが楽しむイベントとして
一部のテーマパークやコミュニティーでのみ発達していた印象です。

その転期となったのが、2009年にディズニーシーで大々的に開催されたハロウィンイベントです。

もちろんディズニーランドでも1997年から同様のイベントが開催されていましたが
来園者は親子連れや子供が多く、SNSも未発達だったことも相まって園外に波及しなかったと言えます。

またディズニーシーに抱く印象は「大人っぽい」「雰囲気が良い」「夜景がきれい」等が多くを占めており
来園者は園内でとことん遊ぶ…というよりは、恋人とのデートや女性同士で利用する空間として
景色や雰囲気を楽しむことに重点を置いていることが伺えます。

さらにSNSの普及も拍車をかけ、美しい景色と共に仮装した姿を写真や動画に収める等
記憶と記録に残る楽しみ方が出来ることが、大人ハロウィンを波及させた要因と言えます。

それ以降もハロウィンの市場は拡大し、渋谷でのハロウィンイベントが大きな盛り上がりを見せる昨今ですが
地方都市でもハロウィンというキーワードのもと盛んにイベントが行われるようになりました。

ではハロウィンはどのようにして全国区のイベントに成長したのでしょうか?

その後押しをしたのがECサイトの普及であり、市場規模を拡大させたのは
恋人や気の合う友人等、小規模なコミュニティーの中で気軽にイベントを楽しむ「お家ハロウィン」という風潮です。

先述したディズニーシーや渋谷も地方都市から現地に行くには時間とお金がかかり
関東近郊に住んでいる場合でも、現地の混雑具合にげんなりし、行くのを断念するケースもあるでしょう。
またイベント自体は楽しみたいけど多くの人の前で仮装するのは気恥ずかしい…と言った感情から
イベントへの参加をためらうケースもありますが、これらのネガティブ要素を払拭できるのが「お家ハロウィン」なのです。

■満足度の指標はSNS

お家ハロウィンの場合、お菓子や食品、室内ディスプレイ、仮装用コスチューム等を調達する必要があり
特に気合いを入れたいのが仮装用コスチュームですが
ハロウィン時期の店舗は大変混雑しており、じっくり吟味して選ぶことは困難です。

そこで消費者が駆使するのがECサイトです。
イベント当日までの都合の良い時間にじっくり吟味しながら商品を選ぶことができ
指定の場所まで届けてもらえるため、大荷物を抱えて帰宅する必要もありません。

しかしハロウィンのカテゴリーに属する商品を集めてただ並べていても
消費者がすんなり購入するかと言うとそうではありません。

ここで必要なのは「シーン提案」です。

メディアが取り上げる「ハロウィン」のイメージは少し大げさで敷居が高く感じるものですが
「お家」というキーワードのもと、室内でのパーティーをイメージできるシーン提案をしましょう。

例えば仮装用コスチュームをメインに販売している店舗の場合、コスチュームを掲載したページ上に
壁面ディスプレイやテーブルコーディネートの参考例、お菓子のラッピング方法
凝った紙ナプキンの折り方等も一緒に掲載することで
消費者はコスチュームだけではなく付随する要素にも興味が湧きます。

その結果、店舗ではコスチュームを購入し、店舗で購入できないものに関しては当然他店で購入することになりますが
シーン提案の中で見かけたテーブルコーディネートを自身のパーティーで取り入れてみたいと感じ
あなたのお店を再訪する可能性があります。

再訪した消費者にとってあなたのお店は「商品を買った店」という認識だけではなく
「有益な情報を提供してくれる店」へと変化していることでしょう。

イベント当日、お家ハロウィンに参加した消費者の多くはSNS経由で画像や動画をアップしますが
そこで受け取った「いいね」の数が、イベント満足度を高める指標となるのです。

昨今は景気悪化や共働き世帯の増加、大手100円SHOPのイベント参入の影響もあり
クリスマスやバレンタイン等の大型イベントについても高級志向の消費者は減少し
イベント時は「お家」で過ごす消費者が今後さらに増加することが予想されます。

1991年頃までのバブル期の日本と比較すると、現在の日本ではイベントに費やした金額はさほど重要ではなく
手作りのケーキやお菓子、各々で工夫したディスプレイで室内を装飾する等
「コスト」をかけず「時間」をかけてイベントを楽しむことが重要な要素と言えるでしょう。

時流を把握した提案で消費者のイベントニーズに応えよう!