AFLAR(アフラー)消費者購買行動理論 概要 E-commerce service company
インターネットが普及し始めた頃、消費者購買行動モデルとして
従来のAIDMAモデルとは異なる概念が必要とされました。
その後、ソーシャルメディア(以下SNS)が台頭すると同時に電通がAISASモデルを提唱したものの、
私共の考えるECにおける消費者購買行動論理との差異を感じ、
2010年9月、弊社センターラボチームが『AFLARモデルと10の消費行動』を提唱しました。
認知 Attention (Attention)
感情 Feeling (Interest/Search/Desire)
検証 Logical (Compare/Consideration/Confidence)
行動 Action (Action)
取得 Relationship (Exciting/Share)
※括弧内が10の消費行動
当時は一部クライアントにお伝えしたものですが、
その後OtoOからオムニチャネル時代へと業界が遷移するも、このモデルは普遍的なフレームワークとして有益と思い、
多くのEC事業者、EC支援業者にご活用いただけるものと考えております。
AISASと比べ特徴的なのは各プロセスを細分化構造(AISDC3AES アイスドシースリーエース)に体系化した点と、プロセスに検証段階が入った点です。
その検証段階を『比較・検討・確証』という3つの要素に分け、これをC3(シースリー)と体系化しました。
オフラインでのショールーミング化はこの段階に発生する事を示唆しています。
さらにはSNSの普及が鈍化する事を想定し、最後の段階とした「共有」要素も比例して鈍化すると考え、
購買後の「感動」を経由しなければ「シェア」に至らない事を示唆しています。
※ここでいう「感動」とは悪い意味で感情を動かされる「感動」も含まれ、風評被害になりうる事も示唆しています。
また、全段階を通してSearchとShare段階は主にオンラインであるも、
それ以外はオフラインも包括した行動モデルに置き換える事ができ、
オムニチャネル時代の消費者購買行動モデルとして見ることができます。
総括的にこのモデル自体はさして目新しいものではありませんが、
多様化した現在のEC市場環境における一定の普遍性を有するフレームワークと考えております。
しかしこのモデルが全てのEC商材に当てはまると思っておりません。
このモデルは一定の広告投下を行い、認知段階において、消費者との接触メディアが存在する場合か、
広告投下を行わずともSNS上で高い話題性を拡散できる商材に有効性があります。
一方、コモディティ化した商品群にはあまり向いていない側面があります。
後述に、各フェーズを解説していきます。
引用・参考
AISAS理論(電通)
サイトの売上を上げる行動心理学(Liskul)
リフレーミング効果(通信技研)
使える行動心理学(findjob)
Attention 認知段階 AFLAR(アフラー)理論 E-commerce service company
上述概要のとおり、このフレームワークは一定の広告投下を行い、
認知段階において、消費者との接触メディアが存在する場合に有効性があります。
具体的にはTV広告ないしマス広告、WEB広告を行う事で認知段階に至るか
SNSにおける高い波及効果によってそれに至ります。
また、コモディティ化された商品は広告効果による気付きが弱く、
このモデルの有効性は低いと考えております。
広告投下のKPIによりますが、このプロセスは販売者にとって最重要段階の一つです。
Feeling 感情段階 AFLAR(アフラー)理論 E-commerce service company
ブランドおよび、商品の全容に興味喚起する段階です。
全ての段階の中で、感情曲線が向上し始める最初のステップであり、
その向上遷移によって、その後の購買アクションに直結する段階です。
(参考:ECブランディング理論 C-VAIPASSの8指標)
この段階は、男性消費者は商品性能や特性、価格で購買欲求が刺激される場合がみられます。
また男性消費者はハロー効果(指定の特徴によって他の評価まで変わってしまう心理現象 ※1)に有効性が見られます。
女性は購入後のシーン想像や価格などで欲求が刺激される事が多く見られます。
また女性消費者はバンドワゴン効果(多数に人気のあるものや、支持されているものに興味が出る心理現象 ※2)に有効性が見られます。
一方、この段階で消費者(特にお悩み系商品等)はプロスペクト理論(損失の回避。利益よりも損失のほうを重大に捉える心理現象 ※3)が働き、否定的かつ猜疑的に商品情報を吸収します。商材にもよりますが、「この商材はすごい」ではなく「この商品が無いと損をします」という表現が有効である場合も考えられます。
※尚、欲求段階(desire)のECにおけるLPフレームワークは下記を提唱しています。
※このフレームワークAISD3CAESにおける欲求段階(desire)の感情曲線を引き上げるフレームワーク。
90年代JPOP楽曲構成のリフレイン理論をベースにした緩急抑揚と訴求ポイントをリフレインする手法。
≫欲求段階の12スキームLPフレームワーク
総じてこの段階は、消費者の右脳が感情で揺さぶられ、一定の興奮状態になる段階であり、
販売者から見れば直接的に消費者との接触が開始する接客フェーズと言えます。接触メディアは多岐にわたります。
※1)一例では、販売者が知名度の高い取引先やパートナー企業のロゴや、著名人の推薦コメント掲載することで、消費者一定の安心感を感じる現象。
※2)一例では、レビューやランキング、販売数。いわゆる「ひとけ」を感じることで安心感を感じる現象。
※3)投資でよく扱われる理論。マーケティング例では、お悩み系商品、美容健康商品のセールス時に「これを使えば損をしない」と想起させる表現する例がある。
Logical 検証段階 AFLAR(アフラー)理論 E-commerce service company
感情段階を経て、消費者が論理的に判断する段階です。
消費者は購買欲求が高まるも、それは販売者の主観的情報に起因している自覚が芽生え、
論理的に「この商品を買う理由・この店で買う理由」を検討する段階です。
この段階の消費者は、マッチングリスク(買ったけれども、自分に合わなかったらどうしようと不安になる意識)の払拭を模索します。
トリガーは多岐にわたり、価格・機能・付加価値・ブランド等、消費者は無数の要素から確証を得ます。
販売者は自社商品のUSP(消費者の購入理由となる価値)が問われます。
特にECサイトは、購入前に触れる事ができない、見る事ができないと言った特性から、無料サンプル提供といった手法で不安除去する例が挙げられます。これは不安除去のみならず返報性の原理(無償で何かを受け取った時、何らかのお礼をしたくなる心理効果 ※4)が発生し、購買(action)への有効性があると考えられます。
(関連:競合サイト分析サービス)
この段階の特徴としては、消費者がマッチングリスクの払拭、確証を得る手段として、実店舗に赴いて現物を確かめるショールーミング化が挙げられます。これは検索および比較が容易となった昨今、実店舗で商品を確認し、その場でスマートフォン等で比較・検討・確証を行う段階です。
総じてこの段階は、消費者の左脳で論理的に「購入すべきか、どこで買うべきか」を考える段階であり、
販売者から見れば店舗や商品のUSPが問われる段階と言えます。
※4)一例では、スーパーでの試食時に、店員から試食を渡される際に、買わなければならないという心理になる事象。
Action 行動段階 AFLAR(アフラー)理論 E-commerce service company
消費者が購買する段階です。
消費者は、購買決断直後であり前々段の感情段階に近い感情曲線となります。
特徴としてテンションリダクション状態(購入決断直後に心理的に無防備になり、ついで買いする心理効果 ※5)になり、
クロスセルが起きやすい心理状態になります。
販売者はアップセル/クロスセルによる顧客単価向上手法と同時に、カート内挙動のUI/UXが問われる段階です。
いわゆるカゴ落ちを回避しなければなりませんが、 弊社センターラボチームが毎年、国内EC売上上位100社のサイト構造分析を行う結果では、カートに遷移する前のUI/UXは各社大きな差はなく、カートに遷移した後のUI/UXは大きく異なります。
ASPの仕様やシステムの制限はあるにしても、この領域はまだ改善の余地がある部分と言えるでしょう。
総じてこの段階は、消費者の心理状態は心理的に無防備な状態にあり、
販売者から見ればカゴ落ちを回避するカート内UI/UXの改善と、顧客単価向上を行う段階と言えます。
※5)一例では、Amazonの「この商品を買った人はこんな商品も買っています」というレコメンド。他には車両を購入時にオプションも購入してしまう状態。
Relation 取得段階 AFLAR(アフラー)理論 E-commerce service company
消費者が商品を取得する段階です。
注文から入手までのファストリードタイムにおいては、 購買時の感情曲線を維持しつつ商品を入手できるため、
全段階を通じて消費者の最も高まる感情曲線となります。感動段階では特徴として、消費者が商品取得時に期待値を超えるか否か、またはサプライズ要素と言った記憶が刷り込まれるかがポイントとなります。
(参考:取得段階の4タイプ商材と顧客期待値/満足度の相関性)
これはピークエンド効果(記憶に残るのは事象における感情ピークと、どのように終わったか、が印象に残る心理効果 ※6)と呼ばれ、のちの共有段階に大きく影響します。それらはポジティブな印象のみならず、ネガティブな印象にも働きかけます。
一例では商品到着時に消費者の期待値を下回った場合、取得段階以前のフローが好印象であっても、ネガティブな感情ピークエンドとなり、その店舗はマイナス評価となり共有段階にも同様の評価で拡散される事が挙げられます。
昨今の熾烈を極めるサービス競争で、消費者の感動沸点は高まり、従来のように感動を与える事は困難となるでしょう。
その中で消費者の期待値を超える価値の提供は必須であると同時に、期待されていない要素にもケアを要する段階です。
この法則と同時に語られるエピソード記憶理論(連想、想起に至る心理効果)が挙げられます。
これは長期的記憶に残る記憶効果の事を指しますが、例えば「蚊取り線香の匂いを嗅ぐと祖母の家を思い出す」と言ったもので、上述のピークエンド効果が強力に作用した時の長期的結果を指す記憶効果です。
販売者のブランディングにも直結する話ですが、例としてブランディング形成前の販売者が、大手モールで販売した場合、消費者の記憶に残るのはその店舗名ではなく「大手モールで購入した」という記憶になるケースもその一例です。
理想的なエピソード記憶効果は「○○の商品といえばAというお店」と連想する感動記憶を消費者に供給したいものです。
共有段階では、ポジティブ/ネガティブいずれかの感動(悪い意味で感情を動かされる「感動」も含む)に至った場合、
消費者には伝達共有の欲求が生まれます。接触メディアはSNSを筆頭に多岐にわたりますが、共有する事でそれを見たユーザーにはウィンザー効果(直接伝えられた情報よりも第三者を介して伝わった話のほうが重要な情報だと感じる心理現象 ※7)が発生します。
これらはバズマーケティングの根幹ですが、上述のとおり相対的に消費者の感動沸点が高くなりSNSのシェア数が鈍化しているというデータもあります。 販売者はより消費者の嗜好、動向を把握し、共有に至るプランニングが必要とされます。
またサブスクリプション型モデル、または高リピート商材の販売者はザイオンス理論(接触回数が増えるにつれて好意があがってゆく現象 ※8)と呼ばれる事象活用し、よりリピート率を上げるケースがあります。
総じてこの段階は、消費者の心理状態は高い感情曲線で、インフルエンサーになりうる状態にあります。
販売者はポジティブな感動と共にリピート率につなげる施策を行う段階と言えます。
※6)一例では、旅行の記憶は「一番良かった(悪かった)こと」と「旅行の最後がどうだったか」の2点要素で、その旅の記憶になる。
※7)サービスモデルの一例では食べログ。機能的には商品レビューなど。
※8)購入前段階ではステップメールを多用する事や、購入後の到着確認、新商品案内等、メール他何らかの手段で接触頻度を増加させて好感を挙げる理論。
その他の研究成果はこちら